波乱万丈の人生~情熱を捧げたバラ~

小笠原 徹朗さん

<経歴>
北海道出身
現在の阿蘇カドリー・ドミニオン(本社:阿蘇市)を創業
勇退後は、阿蘇ローズベリー香園の代表を務める

–北海道出身との事ですが、熊本へはどのようなご縁でいらっしゃったのですか?
生まれも育ちも北海道です。実家は、洞爺湖温泉でお土産屋を営んでいました。私が、27歳の時にお土産屋を廃業し、その場所にアパートを建設する事になりました。アパートを建設中に、次の商売ネタを探しに父と全国行脚したんです。その道中で、急に「クマ牧場を開業しよう」となり、全国で4か所を候補地としました。その中の1つが熊本県の阿蘇でした。

–すごい縁ですね。全国の中でも阿蘇の魅力はどのようなところでしょうか?
水が綺麗で驚きました。また、阿蘇は標高が高く、高冷地という点がクマ牧場を運営する上でプラス材料でした。実は、父と阿蘇を視察した後に、四国の候補地を見に行く予定でした。大分経由で四国行きのフェリーに乗っていたのですが、父と「阿蘇の印象が非常に良かった」との会話になり、フェリーで四国に到着後、そのまま九州に引き返して阿蘇をもう一度見に行きました。そこで阿蘇に決めましたね。私の人生の分岐点だったと思います。

阿蘇は湧き水が多く溢れ、名水百選にも選ばれている白川水源があります。

–そこから、現在の阿蘇カドリー・ドミニオンの創業に繋がるんですね。
そうですね。父と役割分担をして、父が牧場の土地探し担当で、私はクマの仕入れ担当。開園に向けて奔走してました。現在のカドリー・ドミニオンの敷地は、昭和46年に購入しました。今でも当時の事をはっきりと覚えています。

–カドリー・ドミニオンと言えば、志村どうぶつ園のチンパンジーのパン君が有名ですが、注目されるきっかけを教えて頂けませんか。
インドネシアから来日していたサーカス団を日本テレビが取材しに来ていたんです。その時にタレントの志村けんさんもお越しになられていて、当園にいたパン君が志村さんに非常に懐いたんです。志村さんもパン君を非常にかわいがられて、日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」に出演する機会が増えました。

パンくんは志村けんさんと共に出演し、「天才チンパンジー」 と呼ばれ人気を博しました。

–テーマパークの経営後、なぜローズ園に関心を持たれたのでしょうか?
阿蘇カドリー・ドミニオンの経営を69歳で勇退し、1年間は隠居に近い生活をしていました。阿蘇カドリー・ドミニオンを開園以降、会社経営以外にも地元の観光協会の会長を務めたり、地域の為に働き続けていましたので、急に糸が切れたようになってしまいました。そんな時に、TV番組で「食べられるバラ」が特集されており、衝撃を受けました。すぐに図書館でバラの勉強をしましたが、「食べられるバラ」の文献はありませんでした。そこで、全国のバラ農園へ視察に行き、自身で食べられるバラを栽培する決心をしました。元々、植物を育てる事が趣味だった点も影響しているかもしれませんね。

小笠原さんのご自宅の玄関。色んな種類の植物を栽培されています。

–70歳を目前にして、とてつもないバイタリティですね。どのように研究されたのでしょうか?
あまり詳細は明かしたくはありませんが、自身で約300枚のカルテを作成して、香りの強さや栽培方法などの項目を調査しました。「バラ」はたくさんの品種があります。その中で約30種類に絞り込んで栽培しています。

–無農薬での栽培にこだわられていらっしゃいますが、苦労される事を教えていただけますか?
害虫駆除に尽きますね。バラの甘い香りに誘われてカナブンやアブラムシが寄ってくるので、1匹ずつ手で駆除しています。当然ですが、人手が必要になるので、人件費のコストが発生してしまいます。

薔薇のカルテには香り、色、品種、気候などを記載したそう。

–人の手で駆除するのは非効率だと思いますが・・・
農薬を使用すれば、害虫駆除は劇的に楽になりますよ。しかし、農薬をしない方が香りや甘みが増すと考えており、無農薬にこだわっています。

–1年間の作業について教えてください。
まず、1年間農園をフルで稼働させていません。土を休ませる為、稼働するのは春先から11月までです。経済的に考えれば、年間を通して収穫・販売した方が良いのでしょうが、日本一のバラを作っているので、クオリティを下げない為に土を休ませています。

香りや甘味を出すために、ひとつひとつ手で害虫駆除しているとのこと。

–生産者としてのやりがいはどのような時に感じますか?
自分自身で研究を重ねて現在のバラ栽培に行きつきました。自分の子供と同じくらい愛情を注いだバラを褒めて頂いた時はやりがいを感じます。今後も無農薬にこだわって素晴らしいバラを世に出していきたいと考えています。

インタビューを終えて

インタビューを通じて、情熱を持ってバラ栽培に取り組まれていることが伝わりました。小笠原さんが生産するバラは、弊社の化粧品に使用させて頂いております。最近では、熊本県内に留まらず、東京のフレンチレストランとも取引されており、小笠原さんのバラが多くの方に幸せを感動を与えてくれると思います。


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