農業の明るい未来へ貢献したい

山戸 陸也さん

<経歴>
熊本県出身
南阿蘇村役場 農政課(有機農業推進担当)
一般社団法人 南阿蘇村農業みらい公社 事務局長
環境保全型農業技術研究会 会長

–現在の業務内容を教えて下さい。
役場の農政課に所属し、有機農業を推進する業務を担っています。また、「一般社団法人 南阿蘇村農業みらい公社」の事務局長を務めるなど、農業に携わる方を増やす活動も並行して行っております。

–2021年に南阿蘇村役場に中途入職されていますが、何かきっかけがあったのですか?
定年までの残りの時間を考えた時に、もっと未来の農業に対して貢献したいと考えた事がきっかけです。私の出身地は、旧白水村です。白水村と言えば、名水百選にも選ばれている白川水源で有名なように、自然豊かな場所で生まれ育ちました。新卒で県の技術職として採用され、農業試験場や農業大学校などでキャリアを積みました。

白川水源は熊本市内の中央を流れる白川の水源。

最近になり、定年時の自身をイメージすると、農業の明るい未来は描けず、衰退する風景が目に見えていると思いました。これまでの自身のキャリアを遡ると、農業の発展の為に尽力して来ましたが、定年した時に衰退する農地を見たくないという想いに至りました。そんな時に、南阿蘇村役場が採用募集している事を聞いて入職しました。

–長年、農政や農業研究に携われてきて、未来に対して素晴らしい想いをお持ちですね。「衰退するイメージ」とは具体的にどのような点でしょうか?
地元の田畑が荒れるイメージです。もっと噛み砕けば、農業従事者が高齢化しており、休耕地が増えていきます。これまで農作物を生み出していた土地が使用されず、畑が荒れる事は本当に寂しいです。地域の寄合でご年配の方々と会話すると「若い者がいない」という内容を頻繁に耳にします。実際に、若い農業従事者と呼べる方は地域に数人程度です。

全国の休耕地は、琵琶湖6個分と言われています。

–農家は重労働の割にその対価が低いようなイメージもありますが、実際はどうですか?
会社の収支状況の良し悪しがあるように、農家毎で収支にばらつきがあると思います。
農林水産省が有機農業に注力していく方針を打ち出しており、実現していけば徐々にネガティブなイメージも減っていく事に期待したいです。個人の所感ですが、工夫して生産や販売をしている農家さんは、経済的に豊かな方もいらっしゃいます。コロナ状況下になって、有機米や有機野菜が盛り上がっている印象があり、流れが変わりつつあると考えています。

–近年、南阿蘇村では「えごま」栽培に注力されていますが、取組みのきっかけがあったのでしょうか?
意外な返答かもしれませんが、「シカ」や「イノシシ」の被害が多くなった事が発端です。

生産者にとってシカやイノシシによる被害は甚大だそう。

–意外な返答で驚きました。どのような関連がありますか?
先ほど述べたように、地域の高齢化に伴って狩猟登録者の数も減少しており、野生動物の数が増加しているんです。もう一つの理由として、番犬の減少も挙げられます。最近では、犬の放し飼いが禁止されていますので、野生のシカやイノシシがテリトリーを拡大している事も考えられています。都市部にお住いの方は想像できないと思いますが、生産した農作物の大部分を食べられてしまうケースもあり、深刻な問題です。人間を襲ったりする訳ではないのですが、経済的な被害が大きく、地域の方から役場に対して相談が多く寄せられます。
このような経緯から、様々な種類の作物にトライしてきた中で、「えごま」に関しては野生動物の被害が少ない事が分かりました。

無農薬のえごま

–可能な範囲で検証結果を教えて頂けませんか?
大丈夫ですよ。私は過去に農業試験場に勤務した事もあり、いろんな作物で調査した結果、「えごま」の含有成分には、シカにとって有毒な成分がある事がわかりました。シカは好奇心旺盛な動物なので、食べた事のない植物でもとりあえず食べてみる習性があります。ニンニクも試しましたが、ニンニクは臭いがある影響もあり、一度食べたるとその後は一切食べないですね。
イノシシは、米などのデンプン質を好みますので、「えごま」は被害対象になりませんでした。このような結果を受けて、「えごま」栽培に取組み始めました。

–「えごま」は健康に良いイメージがありますが、特徴を教えて頂けませんか?
私たちは、無農薬栽培でえごまを栽培していますので、より安心して提供できます。えごまは、年に1回(10月~11月頃)の収穫があり、実を圧搾します。1kgから約300gのえごま油が採取できます。えごまの葉に関しては、焼き肉屋でサンチュのような役割で目にする事もありますよね。

えごまの穂先

–今後、チャレンジしたい事があれば教えて下さい。
自分が生まれ育った地域に貢献したい。純粋にその想いで仕事をしています。これまで経験した事のない野生動物の被害を受けて、逆転の発想で「えごま」という新たなチャレンジができている事にやりがいを感じています。今はコロナで外出が難しい時期ですが、コロナが収束した際には、是非たくさんの人に南阿蘇に足を運んでファンになってもらいたいです。

インタビューを終えて

農業試験場や農業大学校での長年の経験から、新しい学びのあるインタビューになりました。昨年、南阿蘇村役場に入職されて無農薬の「えごま」栽培にも注力されています。シカやイノシシなどの野生動物の被害が少ないという調査結果を基にえごま栽培に取組まれておりますが、野生動物の「駆除」という発想ではなく、「共存」の道に進まれているような印象を受けました。一日でも早く、コロナが収束して、たくさんの方が南阿蘇の魅力に接して頂ければ嬉しいです。


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